グローバルな職場で感じる日本人の壁
グローバル企業で働く日本人が直面する課題のひとつが「英語での意見発信」です。特に会議の場では、自分の考えをタイムリーに伝えることが求められます。しかし、多くの日本人にとってこれは簡単なことではありません。なぜなら、私たちは学校教育の中で「自分の意見を積極的に発信する」という訓練を十分に受けてこなかったからです。
また、日本語脳のままでは英語の議論に入るタイミングがつかみにくい、まるで大縄跳びに入るタイミングを測っているような感覚に陥ります。
言語の壁を超える第一歩:英語は「慣れ」と「準備」
では、どうすればグローバルな場で効果的に意見を伝えられるようになるのでしょうか?
まず、英語に関しては地道な学習が必要です。ただし、ビジネスの現場で使われる単語は、日々のメールや資料で既に触れていることが多いため、身近な英語表現から始めるのがおすすめです。
会社によっては翻訳ツールや生成AIの利用が認められている場合もあるので、それらを活用して「まず内容を正しく理解する」ことを優先しましょう。議論のテーマや背景を理解すれば、自信を持って話せる範囲も広がっていきます。
スピーキングは中学英語レベルで十分です。複雑な表現ではなく、シンプルな単文で意志を伝える練習を重ねましょう。
まずは一言から始めよう:「参加」していることが大切
グローバル企業では「発言しないこと=参加していない」とみなされるケースも少なくありません。最初から長く話そうとせず、「一言だけ質問をする」「賛同を伝える」といった小さなステップから始めるのが効果的です。
また、自分の意見に自信がないときは、「見落としている点があるかもしれませんが、私の知る限りではこうだと思います」など、謙虚さを残しつつ主張することで、議論のきっかけを作ることができます。これは、日本人の「控えめさ」という特性をうまく活かした言い回しでもあります。
実際の現場から:議論がチーム力を育てると実感した経験
最近、あるプロジェクトで印象的なやり取りがありました。プロジェクトを推進したいプロジェクトマネージャーと、慎重に進めたいプロセス側や運用側(私自身を含む)との間で、活発な議論が繰り広げられたのです。
最初は私たちの懸念がなかなか理解されず、緊張感もありました。しかし、議論を重ねる中で、プロジェクトマネージャーも「急いで進めることのリスク」に気づき始め、私たちも単なる反対ではなく代替案を提示するよう心がけました。
結果的に、チーム全体がプロジェクトに「参加」していると感じられる良い事例となりました。
まとめ:日本人だからこそできるコミュニケーションのかたち
日本人は決して「意見を言えない人種」ではありません。教育環境や文化的背景がそうさせていただけで、経験を通じて伝える力は育てることができます。
大切なのは、「黙っていては伝わらない」という前提を理解し、小さな発言から始めてみること。自分の考えを言語化し、相手と共有することで、チームの中での信頼関係も深まっていきます。
グローバルな場面でも「自分らしさ」を失わずに、意見を伝えていくこと。これこそが、日本人の持つ繊細さと配慮の文化を活かした、新しいコミュニケーションスタイルではないでしょうか。
参考情報
英語コミュニケーションにおける日本人の課題と強み
- 日本人の英語スピーキング力の実態
株式会社プロゴスの調査によると、42万人の受験データから、日本人の英語スピーキング力はグローバルビジネスで通用するレベルに達しているのはわずか6%であることが判明しました。 法人向けグローバルリーダー育成研修サービス | 株式会社プロゴス - 日本人のコミュニケーションスタイルの特徴
茂木健一郎氏は、日本人のコミュニケーションにおける強みとして、相手に不快な思いをさせない敬意表現や、相手の話をよく聞く姿勢を挙げています。 ENGLISH JOURNAL+1iree.otsuma.ac.jp+1
グローバル企業におけるコミュニケーションのニーズ
- 国際コミュニケーションのニーズ分析
法政大学の研究では、グローバル企業における国際コミュニケーションのニーズとして、異文化理解や多様な価値観への対応が重要であると指摘されています。 KAKEN
外国人社員との効果的なコミュニケーション
JETROの報告書では、外国人社員との効果的なコミュニケーションを実現するためには、相互理解を深めるための研修や、文化的背景を考慮したコミュニケーション手法の導入が推奨されています。 ジェトロ